リーディング・スペクタクル「美貌の青空 チェ・ゲバラ、魂の錬金術」2005年08月05日 15:15

@zepp tokyo

イープラで得チケが出たので行ってきました。
朗読劇ということで、もっと淡々としたものを想像していたのですが、意外にも結構しっかりと演出されて、セットも照明も結構凝っていて全く退屈しませんでした。で、良く見たら演出が右近さん。なるほどねー。

「世界のどこかで、誰かが、不正な目にあっていたなら、こころに深く痛みを感じることができるようになりなさい。それが、革命家の最も美しい資質です」

という革命家のエルネスト・チェ・ゲバラが子供たちへ最後に残した言葉を軸にストーリーは進みます。
ある日突然姿を消した恋人が映る30年前の写真を見つけ、その背景を手がかりにキューバへ向かう男。そこで出会った自分と同じ夢を見たという1組の恋人たちの話し。
東京で金持ちの家に恋人と忍び込み、亡くした兄と対話する不思議な体験をする女の話し。
荒川の河川敷で花火を見ながら、慎ましい生活ながらも彼との暮らしに幸福を感じる女が、子供ができたことを彼に伝えるまでの心の動きを伝える話し。
そして、最初のストーリーに出てくる主人公の男が実はチェ・ゲバラと共に戦った革命家の生まれ変わりで、恋人同士は自分の娘と戦友の息子であったという最終章。
この4つのストーリーを市川右近さん、市川段治郎さん、市川春猿さんの3人がいくつもの役を演じながら展開していくわけですが、どのストーリーでも要所に「世界のどこかで~」というチェ・ゲバラの言葉がキーワードとして出てきます。あんまり唐突に出てくるので、多少「いや、そこでいきなりそれはかなり電波だろ」って部分もなくはなかったですが、お三方の演技がとても自然で、すーっと物語に入り込めたせいか素直に感動。
特に二本目で春猿さん演じる裕子が亡き兄一茂(右近さん)と語り合うシーンと、三本目で絹江(春猿さん)が徹(右近さん)に「赤ちゃんができたの」と必死に告げるシーンは、ちょっと目がウルウルしてしまいました。
4本目の冒頭で、最後の戦闘の中「生きていたらキューバで会おう!」と約束し合うエル(段治郎さん)とホセ(右近さん)も良かったなぁ。

かなり精神論・哲学論的な部分も多かったし、「殺さないで生きたまま導いてやれよ!勝手に殺すな!酷!」と思わないでもなかったのですが、全体を通して春猿さんの品良く、可憐で、落ち着いた語り口調に「まあいいか」とごまかされてしまった部分もあり、段治郎さんの美声に聞き惚れて「まあいいか」って部分もあり、右近さんの達者な演技に説得されて「まあいいか」と納得した部分もあり…。いやつまりお三方が素晴らしかったということで。
特に春猿さんは、公演通して30人くらいは最後まで「男が演じてる」ってことに気づかずに帰る人いると思う。凄かった。あのしっとり感は女として見習わなきゃいかん。

朗読劇なのに舞台が八百屋でした。そこにしゃがんだまま台詞言ったり、瞬時に座ったり立ち上がったりして大変だなぁと。でも楽々やってるように見える辺りと、脚の筋肉だけですっくと立ち上がってる辺り、歌舞伎俳優の下半身と腹筋て本当に強いんだなと感心。
途中大きな赤い布が頭上を駆け抜けてステージに飛び込んだ辺りはスーパー歌舞伎チックでちょっと嬉しかった(笑)

ナビゲーターの古藤さんがどことなく海老蔵さんぽくてニヤニヤ。溜息のような「チェ…ゲバラー…」という言い方がやたら耳に残ります。上半身のムキムキ加減が凄かった。
ディーヴァの伴美奈子さんは正直いまいち。ディーヴァなんだからそれらしく、歩き方くらい研究してきてくださいと真剣に思ってしまった。あのシーンで、あの衣裳でダラダラ歩いてこられても興ざめです…。せめて背筋くらいシャンと伸ばそうよということで。

全体的にはかなり良かったです。面白かった!帰宅後W嬢が「うっかり明日の公演クリックしそうになった」と言ってたけど気持ちはわかる。私もサイゴン★ホテルがなかったらやってたよ(笑)

やっぱり歌舞伎で見るのが一番好きだけど、こういう企画もまたやってくれないかなーと思いました。楽しかった。