東宝ミュージカル「ミス・サイゴン」2004年08月27日 13:30

@帝国劇場(ソワレ)

CAST:
エンジニア 筧利夫
キム    松たか子
クリス   石井一孝
ジョン   坂元健児
エレン   ANZA
トゥイ   tekkan
ジジ    杵鞭麻衣

というわけで二度目のサイゴン。8月で楽を迎えてしまう坂健ジョン目当てで取った公演でしたが、今回出色だったのは松さんでした。

とりあえず場面順に印象に残った部分の感想を。
まずエンジニアの店。筧さん、そろそろ慣れてきたかしら…とドキドキしてたら、あらびっくり。思いのほか低音がんばってるじゃないですか。前回みたいに眉間にシワ寄せつつ、段々身体が斜めになっちゃうようなことはありませんでした。おかげで今回は非常に物語りに集中できます。
やってくるジョン&クリス。坂健ちっちゃーい!筧さんとそう変わらないじゃん!でも歌声はパワフル。硬質な声が役に合ってていいんじゃないでしょうか。
で、キムが「♪17歳で初めて~」と歌いだしたところで「それは嘘だろう」と…(苦笑)いや、松さん見た目が落ち着いてますから。でも他のお姉さんと一緒にぎこちないダンスを踊るところはコミカルでよかった。

一気にサイゴン陥落に飛びまして「Morning of Dragon」。二階から見るこのシーンは圧巻!ホーチミン像もでかく見えるし、Dragon Dancerの踊りも上から見たほうが全然迫力ある。そこに疎開してきた中学生…もとい、再教育を受けたエンジニア登場。「♪でも オレはオレ~」って相変わらずなエンジニア。トゥイに捜索を命じられてキムを探しに。
tekkanさんのトゥイは、前回見たときちょっと苦手な感じだったのですが、ダメだった部分のカクカクした歌い方がちょっとソフトになってていい感じに。独裁政権に酔う若者…というか、国の示した狂気に陥りながら、キムという獲物にもその狂気をぶつける激情とでもいいましょうか、そういった印象を強く受けました。キムが好きで手に入れたいんじゃなくて、約束を守らなかった=自分の物にならなかったキムへの執着が強い感じ。

「I still believe」。この曲はサイゴンナンバーでも1・2を争って好きな曲なんですが、ここではANZAが頑張ってました。前回見た高橋エレンはもうちょっと「お姉さん」な雰囲気だったんですけど、ANZAからは必死でクリスを理解しよう、包み込もうとしている健気さが感じられました。クリスはエレンと一緒に必死で過去を乗り越えようと頑張ってるんだねと。下でこちらも健気に「♪でも~ 信じてる~」と歌ってるキムと合わせて涙です。

そしてトゥイの死。このシーンの松キムはホントに凄かった。撃ってからトゥイを抱きかかえるまでの空白、そして現実を理解した時の絶叫。2階で表情なんか見えやしないのに、叫んだ瞬間のキムの表情がありありと見えるようでした。

キムとエンジニアが再び出会うシーン。ここの「♪夢~ 手に入れるぞ~」の筧さんは良い。同行のF嬢が普通苦労しそうな高音キーの見事な出しっぷりに感嘆してました。(その分低音が…)

「命をあげよう」。この曲は松キムにとても合っていたと思う。前で無邪気にお絵かきする息子を見つめながら「この子の為になんでもしよう。私の全てを、命をあげよう」という決意がひしひしと伝わってきました。
重々しいコーラスが重なり夕陽が落ちはじめる。戻ってきたエンジニアがゆっくりとキムに向かって手を差し出す。その手を取るキム。
この時のエンジニアはなんというか、それまでの「小物」感が吹き飛んでいて、キムの運命を翻弄する大きな力のように見えた。「その手を取っちゃダメー!」みたいな。いや、サイゴン自体は全然そんなストーリーじゃないんですが。ファウストを誘うメフィストのように、エリザベートを誘惑するトートのように(違)、なんとなくそんな雰囲気に。
で、一幕終了。涙を抑えながら横を見るとF嬢がハンドタオルで顔を覆っていた(笑)

2幕。ブイ・ドイは今井さんのが良かった。理由は人生経験=年の功だと思う(笑)この曲は20代が歌うには向かないような気がするんだな…。歌の表現にもうちょっと年輪や深みがほしい。でも悪くはなかった。
ここからはジョンの受難の始まり。重要なことを伝えようとしてるのに、興奮してる友を落ち着かせようとしてるのに、誰も話を聞いてくれない…(笑)私がジョンなら「お前ら人の話をきかんかーーーーー!」と怒鳴ってることでしょう。ジョンて偉い。

トゥイの亡霊が現れ、物語は回想シーンへ。「サイゴン陥落」。
ここはね…切ないですね。あのフェンスのセットが上手いんですよね。離されてく二人の距離感が伝わってくる。キムを探しに戻ろうとするクリスの顔面をぶん殴って引きずるジョン。このパンチは坂元ジョンのが激しかった。若さだ。
混乱する大使館にヘリが現れ、去ってゆく。ヘリも2階からのほうが迫力あるように見えたなー。
この後の「SUN&MOON」は唯一松さんが声をひっくり返らせてしまった。頑張れ。

「キムとエレンの対決」。ここは松さんが迫力あったなぁ。でもキムの強さが切ないし、エレンの弱さも切ない。ここのキムの強さってのは結末を知ってるだけに「命を燃やし」てるように見えるんだよね…。3年間一人で頑張ってきたパワーをここで怒りに変換して使い果たしてしまうような。
松さんは「♪もしあなたのせいで クリスの気が変わって 私達を捨てて行くというのなら~」まではメロディをつけて歌い、「今夜彼は私に会いに来るべきよ!」を台詞としてしゃべっていた。賛否両論あるだろうけど、彼女に関しては私は良かったと思う。筧さんもそうだけど、彼女もやっぱりミュージカル女優ではなく「舞台女優」だと思うので、あれがキムの気持ちを一番乗せられる形ならそれでいいんじゃないかなと。実際伝わってきたし。
そのキムに対して「彼を奪うなら戦う」と決意するエレン。弱いエレンなだけにこの決意が悲しい。

「告白」。今回もダダ泣きです。石井クリスの真骨頂というか。石井クリス・松キム・ANZAエレンの組み合わせでこのシーン観てると、ほんっと「誰も悪くないのにな…」と切ない気持ちになる。悪夢で飛び起きるクリスを必死で抱きしめてただろうエレンと、そんな事実も知らずにひたすらクリスに希望を持って生きてきたキム。それぞれの人生を必死で生きただけなのにね。
しかしジョンが入ってきて3重奏になると、ANZAの声が全く聞こえない(苦笑)がんばれ、ANZA!
そんな三人の周りを「♪タム引き取ってよ~」と歌いながら歩くキム。さっきの怒りで何もかもを放出してしまったように覇気はなく、痛々しい。

「アメリカン・ドリーム」。エンジニアの暗い過去が明らかになる「告白」から、そんな人生を歩んできたエンジニアの「夢」が膨らんでゆくこの歌。
前回見たときはどうしてここでこの曲が入るのか理解できなかったんだけど、松キムを見ていたらなんとなくしっくり行った気がする。
結局キムもエンジニアも辛い日々の中で同じように夢見ていたわけで、キムの夢が破れたことを知らないエンジニアはとうとう「これで夢が叶う」と希望に満ちてる状況なわけで。ある意味非常に滑稽で、その滑稽さがエンジニアのエンジニアたるところ…なのかな。
ダンスのキレは冴え渡り、高い音もラクチンにこなし、お姉さんの胸とお尻を触るシーンはほんっとに嬉しそうですね筧さん(笑)この曲見てると筧さんはやっぱりセンターに立つ役者なんだなと思う。狂言回しに使うには濃すぎるんじゃなかろうか、存在が。

そしてキムは破れた夢の向こうにタムという「希望」を見つける。髪をとかし、キャップを被せ、ミッキーのトレーナーを着せ、おしゃれをしたタムに微笑みかけてカーテンの向こうへ。
そこにやってきたエンジニアがタムにゆっくりと手を差し出す。そう、一幕の最後と同じなんですよ。ここでも筧エンジニアはその手で何か大きなものを表現してるように見えました。
室内から銃声が響き、慌てて飛び込む3人。エンジニアがタムを抱き寄せ頭を抑えてキムを見せないようにする。
クリスの腕の中のキムの演技が素晴らしく、瀕死の状態で必死にクリスの腕を掴もうとする松さんの細かい演技に拍手。

いや~、泣きましたね。マジ泣きです。プレビューの時はここまで泣かなかった。
そんでごはん食べながら色々話してたんですが、筧さんてエンジニア合わないのかなーって。あの2回の手を差し出すシーンがあんまり強烈だったからかもしれないんですけど、やっぱりああいう怖さというか不気味さを持つ役が似合うんじゃないかなぁって。エンジニアがそうじゃないわけじゃないんだけど…。この辺は他のエンジニア見てからの判断かなー。

とりあえずは坂元ジョン、お疲れ様でした。来月からはクリスで頑張ってください。(二役大変だなぁ)

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